Kindle Unlimitedを愛用してるって言ってたけど、電子書籍っていいの?
電子書籍に関する論文があったから紹介するね
目次
論文紹介
2019年に発表された、50人を対象にした調査結果の報告。紙の本とKindleで1時間程度の読書をしてもらい、読解力を図るテスト(想起、文章中の出来事を特定する能力、物語のプロットを再構築する能力などを図る)をしている。結果は、ほとんどの指標では紙の本でもKindleでも有意な差はなかったが、時系列と時間性に関連したテストでは、紙の本の方が成績がよかった。著者らは、Kindleでは運動感覚的なフィードバックが少ないため、読者はテキストの空間、つまり物語の時間性の中で特定の事象を見つけるのには、それほど効率的ではなかった、としている。
論文 Comparing Comprehension of a Long Text Read in Print Book and on Kindle: Where in the Text and When in the Story?
Kindleだと「あれ、どこに書いてあったっけ?」っていうの、確かに探しにくいよね。
うん。それは紙の本の方が見つけやすい
これまでの研究成果をまとめたレビュー論文。「読書によって喚起される多感覚的な精神的イメージは印刷物と電子書籍の間に大きな違いがあるとは思えないが、それでも、物理的な書籍の方が、時として、デジタルの書籍よりも効果的に情報を伝えられることがあることを示唆する証拠もある。」「すなわち印刷物の本に触れる経験は、本の見た目、手触り、本の重さ、匂い、ページをめくるときの音など、多感覚的な出会いの可能性を読者にもたらす。」としている。
論文 The Multisensory Experience of Handling and Reading Books
電子書籍より印刷物の方が五感を刺激するというのは、その通りだろうね
2本の論文を読んだ感想
紙の本の方が記憶に残るという点は実感しているし、その結果には納得だ。私の場合、小説やビジネス書はさほど変わらないが、勉強関係の本は、紙でないと内容が頭に入ってこない。なるべく蔵書を減らそうとは思っているが、資格試験の参考書や問題集は、電子書籍だと勉強が進まないので、今でも紙の本を買っている。
紙の本の方が、豊かな読書体験になるという点も賛同する。表紙の手触りとか、本の匂いとか、厚い本のずっしりとした重さとか、そういった全てが本の魅力であり、読書の魅力であると思っている。
紙の本の方が記憶に残るのは、紙の本自体の特性なのか、それとも、これまでの長年の読書習慣による「慣れ」とか「経験」によるものなのか、はっきりしない気がする。電子書籍が急激に浸透したのは、ここ最近のことだ。長く慣れ親しんでいた媒体と、新しく体験している媒体、それを比較したら、今まで使っていた媒体の方に軍配が上がるのは至極当然な結果のような気がする。
私が「勉強関係の本は紙でないと内容が頭に入ってこない」と感じているのも、もしかしたら、長年の勉強習慣で、そう感じているのかもしれない。比較するなら(無理だけど)、産まれてから成人するまで、電子書籍だけで読書をしてきた群と、紙の本で読書をしてきた群で比較しないと、比較にならないのでは?と思う。
今後、本はどうするか
基本方針は変わらない。できるだけ電子書籍に移行して、紙の本の蔵書を減らす。お気に入りの本だけ残す。
「体感が重要」なのは分かっている。だから人は、ライブに行くし、スポーツ観戦に行くし、舞台を見に行くのだ。ライブの実体験と、何らかの媒体を通した視聴体験は別物で、それを比較したら、実体験の方が何倍も濃くて深い体験として記憶として残るのは、多くの人が「そりゃ、そうだろう」と思う結果だと思う。
それは分かったうえで、自分にとって譲れない「実物」「現物」としての紙の本を、どこまで残すかだ。本やノートを何十冊(数百冊?)も持ち歩くのは現実的ではないが、iPadなら、それが可能なのだ。
自分が小学生・中学生・高校生・大学生の時に、教科書とノートと辞書を担いで、家と学校を毎日往復するという苦役から解放されていたら、その労力をもっと別のことに使えていたのではないかと思う。近いうちに「紙の本」は、印刷や輸送にかかる費用を負担できる潤沢な資金や、蔵書を保管できる広い空間を持つ者だけに許される贅沢になる日が来るのではないだろうか。
手紙って、書かなくなったし、貰わなくなったね
紙の本もいずれ、そういうノスタルジックな存在の仲間になるんじゃないかな
アイキャッチ画像 Image by Markus Winkler from Pixaba